事業をグローバルに広げる
その第一歩を踏み出す。
グローバル送電事業
ロンドンと東京とが密にコンタクトを取りながら、
洋上発電所からの送電事業の運営権と各種設備を獲得する
初めての海外送電事業にチャレンジしている。
金城 佑紀東京電力パワーグリッド
海外事業推進室 海外送電プロジェクト推進グループ
山岸 風摩東京電力パワーグリッド
工務部 送変電建設センター 地中送電整備第一グループ
TEPCOPGUK ロンドン事務所通勤途中
自宅からオフィスまでは電車を利用して40分。
さまざまな言語が飛び交う
多国籍なまちロンドンの、
豊かな緑を眺めながらオフィスへ向かう。
2022年に設立されたTEPCOPGUK(※)における
1つのミッションは
イギリス東海岸の沖合32kmにある
トライトンノール洋上発電所でつくられた
電気を
イギリス内陸部まで送電する事業のための設備一式を獲得し、
さらにその後の事業運営を行うことにある。 ※TEPCO POWER GRID UK Limited
TEPCOPGUK ロンドン事務所出社
事務所があるのはロンドン中心部のオフィスビル。
いつものように
ビルの受付スタッフと軽く挨拶を交わし、
事務所のドアを開けて、
すでに出社しているメンバーと声を掛け合う。
初めての海外送電事業に
出資参画をする
このプロジェクトをはじめ
新しいビジネスに
挑戦しようと集まった7名の社員が勤務し、
多彩なスキルや
知見を活かし、
使命感を抱いてプロジェクトの推進にあたっている。
TEPCOPGUK ロンドン事務所カフェスペース
始業前のひとときは、このオフィスビルの中にある
飲み物やスナック類が自由に利用できる
共有カフェスペースで、
コーヒーを飲みながらリラックス。
事務所に戻れば自然と仕事モードに切り替わり、
9時からの日本とのWEBミーティング前にメールをチェック。
多忙な一日がスタートする。
TEPCOPGUK ロンドン事務所週次WEB会議
朝一番のタスクは日本のメンバーとの週次WEB会議だ。
9時間の時差がある
日本は、今、夕方の18時。
プロジェクトの全体進捗状況についてお互いに
報告し合う。
内容が技術・商務・財務など多岐にわたるため、
日本側と
協力しながら全体を把握するべく
頭をフル回転させる。
日本との共有会議を
終えると、
イギリスで事業の共同運営を行うパートナーとの進捗共有会議、
技術アドバイザー主催の技術会議と会議が続く。
東京本社オフィス週次WEB会議
イギリスとWEBで結んで週次打ち合わせに臨む。
参加しているイギリス側の
パートナーともスモールトーク(雑談)を交えながら会話し
和やかな雰囲気で
会議がスタートする。
事業の成功に欠かせないのがお互いの緊密な連携だ。
この日、イギリス側で行われる予定の陸上変電所の視察についても
日本側からの意見や要望をしっかりと伝える。
港区内オフィス
(送変電建設センター)週次WEB会議
技術職の担当者が、イギリスの最前線で働くメンバーと
技術的課題について
議論する。
得られた技術やノウハウを文書に残して社内共有し、
国内設計と比較してどう違うのかを分析している。
本来の業務は
国内送電網のケーブル工事の設計業務だが、
海外事業に興味があって
自ら手を挙げてプロジェクトに参加。
国内で培った設計ノウハウを
フルに活かし、
現地担当者と積極的にコミュニケーションを図っている。
ロンドン・パートナー事務所週次WEB会議
技術・商務・財務いずれのWEB会議にもイギリスで事業の共同運営を行う
パートナーのメンバーも参加する。
事業運営権の獲得交渉は
パートナーのほか、
イギリス側の財務・法務・商務などのアドバイザーの
力強いサポートのもとで進められてきた。
最終的に、約2年間にわたるハードな交渉の結果、
無事に事業運営権を獲得することができた。
ロンドン市内パートナー事務所訪問
設備移管後に、設備・財務の運営管理を行う
会社を持つパートナーの
事務所で会議をするために、
メンバー3名で相手オフィスに向かう。
午後からの陸上変電所の視察に先立って
契約書の内容を再度確認するのが
目的だ。
整理した現地でチェックすべき内容やポイントを把握し、
見逃しがないように確認するために、
緊張感を抱きながら事務所へ。
ロンドン市内パートナー事務所でのミーティング
共同出資をしているパートナー事務所の
オフィスで会議に臨む。
日本側と連携しながら、
東京電力の託送電気事業で培った技術的な知見から
設備についての意見交換を実施する。
ロンドン市内パートナー事務所でのミーティング
懸案事項を一つひとつ確認していき、
課題があればその対処法について
スペシャリストたちと検討を重ねていく。
ミーティングで何よりも重要なのは、
プロジェクトの現状を正確に把握すること。
計画に遅れがあればリカバリー方法についても検討する。
ロンドン市内パートナー事務所
会議で首尾よく目的を果たすことができて、
ホッとした面持ちでオフィスを退出する3人。
ロンドン市内キングスクロス駅
早めのランチを済ませて、
イギリス東部のリンカンシャー郡に位置する
トライトンノール陸上変電所を視察するために、
ロンドン中心部の
ターミナル駅である
キングスクロス駅に向かう。
現地まではおよそ1時間半。
そこで約1時間かけて施設を見て回り、
再び戻ってくるという
タイトなスケジュールだ。
ロンドン市内キングスクロス駅
キングスクロス駅からイーストコースト本線の高速鉄道で、
リンカンシャー郡にあるグランサム駅を目指して列車の旅に。
「AZUMA」という名前のこの高速鉄道は、
日本企業が受注して
納入したもので、
揺れが少なく快適な乗り心地がイギリスでも評判だ。
その車内で視察時に確認すべき内容について
再度、事前の打ち合わせをする。
リンカンシャー郡グランサム駅
変電所への最寄り駅であるグランサム駅に到着。
そこからはタクシーに乗り換えて、
目的地であるトライトンノール陸上変電所へと移動する。
大規模な変電所は広大な敷地を必要とし、
周辺に住宅が少ない郊外につくられるケースが多いため、
現地まではさらに30分ほどを要する。
リンカンシャー郡タクシー車内
変電所に向かう途中、
タクシーの車窓ごしに広がる、
イギリスならではの緑の平坦な
田園風景を眺める。
朝から慌ただしく動き回る中での、
ささやかなブレイクタイム。
リンカンシャー郡トライトンノール陸上変電所
トライトンノール陸上変電所に到着。
トライトンノール洋上発電所で
つくられた電気は、
洋上変電所から伸びる海底ケーブルと
地中ケーブルを通って
この陸上変電所へと送られてくる。
その電気を受けとって電圧を調整し、
送電会社へとリレーするための
施設だ。
今回の送電事業において要となる施設を訪れると、
心がたかぶるのを覚える。
リンカンシャー郡トライトンノール陸上変電所
視察のために待ち合わせていた
送変電設備の保守を今後行っていく会社の担当者と合流する。
冬の冷たい風が吹きつける中、
作業用のコートにヘルメットを着用して視察がスタート。
担当者から変電所の概要についてレクチャーを受ける。
リンカンシャー郡トライトンノール陸上変電所
午前中にパートナー事務所との会議で
打ち合わせた内容に沿って、
開発会社から引き継いだ設備が、
交渉で提示されていた内容に合致しているかを、
漏れや見逃しがないように
一つひとつ確認していく。
リンカンシャー郡トライトンノール陸上変電所
変電所には電圧を調整するための変圧器のほか、
事故が発生した際に
瞬時に電流を遮断したり送電網を切り替えたりする、
絶縁開閉装置などのさまざまな機器が設置されている。
そうした変電所内にある機器や装置についても
担当者と一緒に確認を行っていく。
リンカンシャー郡トライトンノール陸上変電所
さらに送変電設備について今後の点検計画について質問をする。
説明をしてくれた担当者は、
この送変電設備を保守していくパートナー。
自分たちの質問に的確に答えてくれたことに感謝し、
信頼が置けるパートナーになれそうだと実感する。
1時間ほどの視察を終えて帰途につく。
ロンドン市内キングスクロス駅
重要施設である陸上変電所を訪れて、
問題なく運用が行われていることを
確認できたのは、
プロジェクトを進めるうえでも大きな成果だった。
帰りの高速列車の中でそのことを喜び合った。
冬場のロンドンは日没が早く、
15時にもなればまちが夕闇に包まれ始め、
キングスクロス駅に
到着した頃には
すっかり日が暮れていた。
そのままオフィスに戻る。
TEPCOPGUK ロンドン事務所ミーティングスペース
事務所に戻った二人に
ほかのメンバーたちから労いの言葉が掛けられる。
さっそく社長も交えてミーティングを開き、
トライトンノール陸上変電所への
出張の内容や
視察した設備の現状などに関する報告を行って、
メンバー全員で
共有する。
さらに今後についての方針を確認し合う。
プロジェクトが大きく進展しているのを実感する。
TEPCOPGUK ロンドン事務所オフィス内
午前中に行った技術アドバイザー主催の進捗会議について、
議事録を作成して
日本サイドと共有する。
この日、視察した変電所に関する報告も行う。
日本側への依頼や情報共有のメールは、
時差があるため当日のうちに
済ませるようにしている。
次の日の朝には日本側からのサポートを
得ることができるからだ。
日本側からのバックアップもあり一体となって
プロジェクトを進めている。
東京本社海外事業推進室
一日の仕事がメールのチェックから始まるのは、日本も同じ。
とくにプロジェクトが佳境に入る時期には、
一晩で送られてくるメールが
100通以上にも及ぶ。
夜中のうちにイギリスサイドでプロジェクトが
大きく進展し、
日本側への依頼事項が届いていることも多く、
必ず確認しなければならない事項を見逃さないように、
しっかりと
目を通していく。
チーム内で共有が必要な内容は資料作成を行うことも。
港区内オフィス(送変電建設センター)
各種メールとともにイギリスから送られてきた
膨大な設備データを
チェックする。
このデータをどのように活用すれば
送変電設備などの
不具合の兆候を早期に発見できるかを、
社内のデータ戦略化グループと
一緒に分析し、細部にわたって議論していく。
このグループにはさまざまな手法を駆使してデータを分析する、
社内でも屈指のデータサイエンティストたちが集まっている。
東京本社海外事業推進室
変電所や送電ケーブルなどの所有権を移転するのにあたり、
締結が必要な
さまざまな契約書類の内容を確認し、
本社の経営陣に説明するための
資料を作成する。
日本の取締役会で議論して決議された内容と、
実際の契約に
落とし込まれている内容に相違はないか、
また、契約締結で当社が負う
義務や得る権利は何なのか、
そうしたプロジェクトの成否を
左右する内容を
細心の注意を払って一つずつ精査していく。
東京本社法務部門社内打ち合わせ
契約書に不明確な点があったため、
その内容を確認するために法務部門へ。
契約書は英語で書かれているうえに独特の言い回しも多く、
正確に理解するには時間がかかることも少なくない。
ミスを防ぐとともに、適切なアドバイスを得るためには
社内外のスペシャリストの力をうまく借りることが
海外プロジェクトでは不可欠だ。
港区内オフィス(送変電建設センター)
本来担当しているメインの仕事は、
国内送電網のケーブル工事の設計業務だ。
送電網の設計技術が結集された送変電建設センターでは、
工事に採用する
ケーブルや付属設備類の仕様について、
グループのメンバーと協働で
設計を進める。
設計担当者の仕事は、このほかにも工事費積算や
さまざまな
法律に関わる申請、予算管理、工事進捗管理、
工事における
トラブル対応など、多岐にわたっている。
港区内オフィス
(送変電建設センター)
担当しているプロジェクトの設計条件が変更になり、
追加の予算が必要となる可能性が発生したことで、
先輩の設計担当者にその対処方法について相談する。
大規模なインフラ工事の予算規模は億単位に及ぶため、
その予算管理をしっかりと行うことも、
技術職にとって重要な業務の一つだ。
港区内オフィス
(送変電建設センター)
夜の現地エンジニアとの会議に向け準備を進める。
社内のデータ戦略化グループからメール送付された
分析結果を本社の技術部門に報告し、
現地エンジニアに伝えるべき技術的な課題を入念に確認する。
東京本社週次WEB会議(現地スタッフとの会議)
イギリス側との週次WEB会議に参加する。
プロジェクト進捗上で
確認すべき事項の
抜け漏れがないようにして、
何がボトルネックに
なっているのかや、
全体スケジュール感をつかめるように
打ち合わせ前に
頭を整理して臨む。
自分の担当分野を責任持ってやり遂げられるよう、
必ず発言するようにしている。
港区内オフィス(送変電建設センター)週次WEB会議(現地エンジニアとの会議)
イギリスの最前線で働く現地エンジニアやコンサルとのミーティングでは、
データ戦略化グループから報告のあった分析結果や
本社の技術部門から
受けた指示をベースに
技術者としての立場で意見していくのが役割だ。
得意の英語力を活かして積極的にコミュニケーションを図っていく。
現地事業者から引き継いだ設備や事業の運営が
軌道に乗るまでは気が抜けないと感じつつ、一日が終わる。