PROJECT
STORY
04

データを解放する。
イノベーションの輪が、
広がっていく。

理系 東京電力パワーグリッド

Project Outline

グリッドデータバンク・ラボ

東京電力パワーグリッドによって普及の進む「スマートメーター」。そこから得られる電力データをもとに、オープンなイノベーションを生み出すための舞台がグリッドデータバンク・ラボだ。立ち上げから関わった熊谷が、走り続ける最前線とは。

Project Member

東京電力パワーグリッド
事業開発室 事業企画グループ
(グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合 サービスデベロップメントチーム駐在)
熊谷聡一郎(2010年入社)

※部署名等は取材当時のものです

Chapter 01

スマートメーターが生む、新種のデータ。

東京電力パワーグリッドの「スマートメータープロジェクト」が大詰めを迎えている。2020年度までに、サービスエリア内に約2,900万台ものスマートメーターを設置。30分ごとに電力使用量(積算値)を送信・処理するという、世界的にも珍しい試み。もたらされる電力データにより、省エネの促進や新たなサービス開発、設備の効率化など、各方面にとってのメリットが期待されている。

……いや。電力データの可能性は、もっともっと大きいのではないか。そんな声が社内では上がっていた。スマートメーターは東京電力エリアだけではなく、2024年度末までに全てのエリアに設置される。つまり、あらゆる世帯から定期的に取得される、ほかに類を見ないデータが生まれる。それをさまざまな分野のデータと掛け合わせることで、これまでにないサービスが生まれ、世の中をさらに便利に変えていくかもしれない。
ただ、未知の部分も多かった。30分に1回、個人ではなく世帯ごとに取得されるという条件のデータに、どんな使い途があるのか。もともと電力事業のために集めたデータを、他の分野に応用しようとしたら法的にはどんな制限を受けるのか。確かめたいことはいくつもある。検証のための組織が必要だ。その立ち上げを会社に働きかけるべく、プロジェクトが動き出した。その中心にいたのが熊谷だ。分社化をはじめとするプロジェクトを次々に軌道に乗せてきた、いわば「請負人」のような存在。

Chapter 02

変わらない使命と、かつてない手法。

ところが、話はそう簡単には進まなかった。ネックは、熊谷たちが描いていた組織の形態にある。収益を追うのではなく調査や検証が目的であるため、営利法人ではなくLLP(有限責任事業組合)にしようとしていた。出資する組合員は東京電力パワーグリッドのほか、中部電力、関西電力、さらにスマートメーターデータ管理システムのベンダーであるNTTデータ。ところが、LLPを立ち上げた前例が社内にない。つまり、リスクを判断するための経験値がない。取り組みの意義は誰もが認めるところだったが、いざ承認となると二の足を踏まれてしまう。

それでも熊谷は粘り強く挑んだ。電力データの可能性に惚れ込んでいたからだ。ビッグデータの活用は、情報産業を始めとして世界中でビジネスのキーワードになっている。一方で、ある企業が取得したデータは、その企業内だけで使われるケースがほとんどだった。

Chapter 03

業界を超えて、アイデアをぶつけ合う。

2019年3月。半蔵門駅のすぐそばに、LLP「グリッドデータバンク・ラボ」はオフィスを構えた。現在、在籍しているのは十数名。もちろん熊谷もその1人だ。

設立1年目の目標に定められたのは「ユースケースの発掘」だった。電力データをどんなデータと掛け合わせ、どう活用するか。その具体例を模索していく。組合員のほかにも、さまざまな企業や団体が手を挙げた。「電力データに可能性を感じたから」という声もあれば、「自分のところにもビッグデータがあるが、どう活用すべきかヒントがほしい」という場合もある。いずれにしても心強いパートナーだ。まずは風呂敷を広げるつもりでアイデアを持ち寄り、語り合う。原石の中から「これは」というものをピックアップし、磨き上げていく。

Chapter 04

データを解放し、もっと役立つサービスを。

たとえばある自治体とは、防災対策という切り口から話が広がった。自然災害が発生した際、エリア内にどれくらい住民が残っているかを電力データから把握。避難所の収容人数と付き合わせ、状況に合わせて最適な避難誘導を行うというもの。ほかにも、物流の改善や店舗の売上予測など、さまざまなアイデアが飛び出した。刺激的だった。グループ内だけで話し合っても、なかなか出てこないような視点や発見がそこには溢れていた。

並行して、政府とも話し合った。電力データを、電力事業の外で活用することに対して見解を求めたのだ。その是非の判断には、電力データがいかに大きな公共の利益を生み出せそうかが影響する。まずは幸先よく、「個別データそのままではなく、統計化して使う分には問題ない」という返答があった。できれば次は、個別データの使用にまで踏み込みたい。そのためにも、電力データの可能性をさらに掘り下げながら訴えかけていくつもりだ。

「グリッドデータバンク・ラボ」には、3年という期限が設けられている。その先は? 「わからない」と熊谷は笑う。ただ、確実なことがある。これまでは使いこなせていなかったデータを世の中に解放し、新しいサービスを世の中へ。この目標に向かって、グリッドデータバンク・ラボが着々と歩みを進めていること。そして、「融合」がキーワードだといわれているエネルギー業界の最前線を、熊谷が走っていることだ。