PROJECT STORY #02

太陽光発電による自己託送支援

OUTLINE

自社の太陽光発電設備でつくった電気を、余さず自社施設に送り、活用する。再生可能エネルギーでは前例のなかった「自己託送」に、企業とともに挑む。

PROFILE

東京電力エナジーパートナー
販売本部 再エネ推進部 再エネ事業企画グループ
中込 直樹
2006年入社
理工学研究科 電気電子工学専攻
※部署名等は取材当時のものです
CHAPTER 01

国内初のプロジェクト。

2018年初旬。ある営業担当から中込のもとへ、こんな打診があった。「太陽光発電を電源とした自己託送を検討している会社がある。協力してもらえないか」。自己託送とは、自社の発電設備でつくられた電気を、電力会社などが持つ送配電ネットワークを介して離れた自社施設へ送るしくみ。電力を余すことなく活用できるうえ、太陽光発電による自己託送が実現できれば、再生可能エネルギーの導入拡大にもつながる。

当時はまだ、企業がソーラーパネルなどの太陽光発電設備を導入すること自体、今に比べるとそこまで一般的ではなかった。しかも自己託送といえば、大規模で安定した発電方式を電源とするのが通例。この構想は、国内に前例のない、きわめて先進的なものだった。だからこそハードルは高い。不透明な部分もある。しかし、企業とひとつのチームを組むようにして挑むプロジェクトに、中込は意欲をかき立てられた。

CHAPTER 02

「同時同量」に挑む。

中込はまず、国が定めた自己託送制度の中身を精査することから始めた。法令、ルール、約款……一見するだけでは難解な情報を読み解き、解決すべき課題を洗い出していく。最大のハードルと目されたのは「発電計画」だった。電力を安定的に供給するための基本は「同時同量」。発電量と消費量は、同じ時、同じ量でなければならない。そのため、太陽光発電が発電する時間帯の発電量・消費量を30分単位であらかじめ予測し、計画値として提出することが義務づけられている。計画値と実際の値が大きくずれてしまえば、計画値のズレに対するペナルティが多く発生することもありえるシビアさだ。

さいわいなことに東京電力では、高度な予測技術がすでに研究されていた。それをもとに「太陽光発電設備の敷地内で消費する電力量」と「余剰分として送り出す電力量」を割り出すことができる。設置場所の条件や予測のしやすさから、太陽光発電設備の設置場所はソニー・ミュージックソリューションズの倉庫である「JARED大井川センター」に決まった。そしてこの先にもうひとつ、中込にとっての大仕事が待っていた。

CHAPTER 03

再エネの先頭へ。

「JARED大井川センター」は静岡県焼津市にある。自己託送に使う送配電ネットワークは、中部電力のものを借りることになる。中部電力が了承しなければ、この計画は水の泡だ。中込は細心の注意を払って、中部電力へのプレゼンテーションを準備した。電力の需給について、自分たちがどんな予測技術を持っているか。誤差をどこまで抑えられるのか。アピールの方法を間違えれば、ここまでの努力が台なしになるかもしれない。納得を得るためのロジックから、資料に入れる数値ひとつまで、徹底的に熟慮を重ねた。

「ここまでできるのですね」。中込の資料は、感心をもって中部電力に受けとめられた。中部電力の中でも色々議論されたことは想像に難くないが、しばらくの後に出た回答は「了承」。構想は、実現への大きな一歩を踏み出した。そして2020年2月。「JARED大井川センター」の屋上に設置された、1,700kWもの太陽光発電設備が予定通り稼働を開始した。前例のない挑戦が、ついに実を結んだ。

現在、太陽光発電による自己託送はあちこちに広がりを見せ始めている。他社でも同様のサービスが始まり、条件の一部緩和という追い風も吹いた。しかし「どこよりも先に手がけたことの意味は大きい」と中込はいう。プロジェクトの成功も一つのきっかけになって新設された「再エネ推進部」で、中込は当時の経験を活かし、新たなサービスの開発に着手している。