RECRUITMENT INFO.

プロジェクトストーリー

自然災害に備えたシステム構築が
部門の壁を超えた
化学反応を引き起こす

2019年9月、千葉市付近に上陸した台風15号は記録的な暴風となり、関東各地に大きな被害をもたらした。このとき最大93万戸超の大規模な停電が発生。完全復旧まで長時間を要した。原因は、現場の状況を迅速に把握できなかったこと。そして把握した情報を円滑に共有できなかったこと。2019 年末、そうした反省をもとに防災関係のDXプロジェクトが立ち上がり、今後の自然災害に対する備えが始まった。プロジェクトのコアとなる「PG地図情報共有システム」の開発に奮闘した東京電力パワーグリッドの社員3名が、当時を語り合う。

MEMBER

金子 郁巳

東京電力パワーグリッド
技術・業務革新推進室
基盤システム技術グループ 兼
データ戦略高度化グループ
2006年入社

庄司 祐之

東京電力パワーグリッド
技術・業務革新推進室
基盤システム技術グループ
マッチングシステム開発チームリーダー
2006年入社

北 正輝

東京電力パワーグリッド
技術・業務革新推進室
基盤システム技術グループ 兼
データ戦略高度化グループ
2005年入社

chapter01
最高速度で突き進む
プロトタイプ、リリースまでの道のり

2020年1月、若干名の社員でそのプロジェクトは始動した。彼らのミッションは、全社大で災害状況を可視化し共有するプラットフォームを構築すること。実現すれば、災害時の適切な判断と、正確な情報公開を支援する強力なツールになるだろう。開発は、時間との勝負。次の台風が襲来するまでに、プロトタイプを形にしなければならなかった。

庄司
庄司 

プロジェクトが始まった当初は、私たちが所属する基盤システム技術グループも形になっておらず、ごく少人数のスタートでした。各自がそれぞれ担当していた業務も違っていて、極端な表現をすれば寄せ集めのチームとさえいえるかもしれません。

北  

私はそれまでRPA(※)による業務改善に携わっていましたし、庄司さんはシステム開発支援を担当していました。金子さんは、私たちより遅れてこのプロジェクトに参画する流れとなったのですが、本来は鉄塔や送電線などを管理する工務の専門家でしたね。プロジェクトに参画してからは、サーバー構築やプログラミングなど技術的な領域を担当していましたね。
(※)Robotic Process Automationの略。事務系の定型作業を自動化するツールのこと

金子
金子 

私がプロジェクトに加わる前は、二人がプロトタイプの開発に取り組んでいました。2020年1月に始動して、台風シーズンが始まる前の7月には、形にしなければならなかったわけです。わずか半年でリリースにこぎつけたことは驚嘆します。

庄司
庄司 

それぞれ得意分野を担務しつつも、メンバー同士で都度、役割を話し合い、相互にフォローしながら流動的にプロジェクトを動かしていきました。各自で課題に取り組んでは、壁に当たったら持ち寄って相談して、またそれぞれの業務に立ち向かっていく。前例のないプロジェクトでしたので、全体像もよく分からないまま、がむしゃらに突き進んでいたというのが実感です。

北  

PG地図情報共有システムのコンセプトは「エンゲージメント」です。これまで配電や送電、変電など、各部門が独立したシステムや設備を管理しており、一元的に設備状況を確認するシステムがなかったため災害復旧などの緊急事態に、スピーディーな情報把握が課題でした。そこで部門間の連携を強化するために、各基幹システムからデータを集め、システムに表示できるよう加工することが私のミッションでした。

庄司
庄司 

とにかく時間がなかったので、いろいろな部署にヒアリングを重ねて必要最低限の機能を洗い出し、なんとかプロトタイプのリリースに間に合わせました。私たちなりのアジャイル型で開発を進め、早期にシステムの運用開始ができたことは大きな収穫だったと思います。

chapter02
「ユーザーライク」を実現するための
かつてない試み

2020年7月に「PG地図情報共有システム」のプロトタイプがリリースされた。だが、これは開発のファーストステップ。本格的な活用にあたっては、より優れた操作性や堅牢なセキュリティ、高負荷にも耐えられるような安定性が求められる。2020年10月、基盤システム技術グループが発足し、開発現場はいよいよ熱を帯びる。

金子
金子 

プロトタイプがリリースされた後、2020年10月に基盤システム技術グループが編成され、私もそこに所属する形でプロジェクトに加わりました。本開発のゴールは2022年7月。2年弱の期間が設けられたわけですが、それでも通常の開発に比べて余裕があったわけではありません。基本設計、詳細設計、そしてプログラミングと、まだ踏むべき工程が多く待ち受けていました。

北  

確か2021年4月頃までは基本設計に取り組みましたね。特にインフラ面においては、金子さんがチームをリードしてくれました。システムを構築するための方針を定めたり、実際に構築作業を担当する協力会社の設計をレビューしたり、セキュリティや保守管理の仕組みを検討したり。

庄司
庄司 

システム開発を進める上で、難しいのは東京電力として定められたマニュアルを逸脱せず、開発のアジリティを確保することでしたね。私は以前システム開発支援を担当していましたので、開発の “お作法” には通じているほうだと思いますが、マニュアルを逸脱しないように関係各所と調整することに注力しました。あらゆる方法や手段を検討し、周囲の理解を得ながらプロジェクトを進めました。

金子
金子 

私はそのあたりの“お作法”に詳しくないので、庄司さんの知見に助けられました。たとえば、システムを動かすためのインフラ。今回は開発工程を少しでも短縮するために、クラウドサービスをベースとして使うことを検討したのですが、前例のない選択のため承認を得るまでが大変で。

北  

どのくらいの工数削減になるのか、具体性を持ってロジックを積み上げていく。そのためにみんなで頭を悩ませましたね。プロトタイプをベースに本格的なシステムの設計につなげることが、画期的でしたので開発速度を向上させることができたと思います。

金子
金子 

画期的といえば、今回はPoC開発と呼ばれる手法を採ったこともそうでしょう。従前であれば、リリース後一年以内には閉じてしまうプロトタイプを、継続して検証用に活用したのです。このプロトタイプには、基幹化システムに比べ容易に機能を実装していくことができます。そのため、計画、設計、実装、テストのサイクルを高速で回していくことが可能になりました。しかも、ユーザーは本番環境に近似の画面を見ながら使い勝手を確認しますので、ここは使いにくい、改善してほしいと、非常に解像度の高い意見をもらうこともできました。

庄司
庄司 

システムをリリースした後、アンケート調査を行ったところ、90%以上のユーザーから高い評価をいただくことができました。実機を使ってユーザーとともにシステムを磨き込んでいったのが、高評価につながったと考えます。

金子
金子 

そうですね。非常にユーザーライクなシステムを実現できたことは、率直にうれしく誇りに思います。

chapter03
エンゲージメントの
システムに秘められた
これからの発展可能性

2022年7月、ついに「PG地図情報共有システム」がリリースを迎える。災害時の円滑な状況把握と共有を目的に構築されたものでありながら、非常に応用が利く機能を備えるがために、さまざまな形で活用されることになる。システムリリースがもたらした影響から開けた展望とはどのようなものか。

北  

非常時の大規模アクセスを想定したシステムでしたので、ネットワークまわりの調整は苦労しましたね。

金子
金子 

東京電力でこれまで運用していた他の地図システムに比べ、10倍ほども速い表示速度が目標でした。役員の方々を交えて表示試験を行ったときの緊張感は、今でもはっきりと覚えています。

庄司
庄司 

幸いなことに2019年のような台風災害は起きていないので、本来的なユーザー評価は現状のところ上がっていないのですが、日常の業務にもシステムを活用してもらっているようで、そうした反響は耳にするとうれしい気持ちになります。

金子
金子 

非常に拡張性に優れているため、いろいろと試しながら価値を高めていけるシステムだと思います。たとえば、私がもともと携わってきた工務では、送電線と樹木の接触を避けるために、樹木の伐採を行う業務があります。山に分け入って作業をするのですが、土地所有者の許諾がない樹木を切るわけにはいきません。そこでPG地図情報共有システムに登記簿情報と公図を連携させました。これにより、精度の高い現在地情報を持ちながら、切ってもよい木、そうでない木を判断できるようになります。

北  

さまざまな部門の意見を採り入れることで、化学反応が起きてさらに進化していく。それがこのシステムの面白いところですね。まさに当初のコンセプト通り、システムを介して部門間のエンゲージメントを高めていく効果も期待できそうです。

金子
金子 

プロトタイプ環境で柔軟に開発を進められることが、システムの拡張性を支えていますね。小さいモジュール単位で開発を進め検証と調整を繰り返す、いわば“失敗できる”システムづくり。この開発手法を実践できたことは、当社としても大きな財産になりました。

庄司
庄司 

ただ何かシステムを導入するだけでなく、PG地図情報共有システムを通じて、現場と開発チームをエンゲージメントし、業務変革への関心を活性化させられたと思います。今後さまざまなプロジェクトにおいてDX推進に向けた、面白いことができる手応えを感じています。

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