プロジェクトストーリー
2022年2月、東京電力エナジーパートナーから「エネカリプラス」がリリースされた。電気は「買って、つかう」から「つくって、ためて、つかいこなす」時代へ。そのコンセプトが示す通り、自宅に設置した太陽光発電システムで日々の電力をまかなうPPA(Power Purchase Agreement)サービスである。初期費用は無料、毎月定額で利用可能なサブスクリプションモデルとなっており、家計にやさしいだけでなく、カーボンニュートラル社会の実現にも貢献する。本サービスを生み出したプロジェクトチームから社員4名が再結集して、開発の日々を振り返った。
山本 哲也
東京電力エナジーパートナー
お客さま営業部 アセットサービス部
サービス推進グループ 第一チームリーダー
2020年入社(キャリア採用)
水野 未結
東京電力エナジーパートナー
お客さま営業部
電化推進グループ
2019年入社
手代木 由之
東京電力エナジーパートナー
サービスソリューション事業部
オペレーション企画グループ
企画第四チームリーダー
1996年入社
中本 雄彦
東京電力エナジーパートナー
お客さま営業部 アセットサービス部
サービス推進グループマネージャー
2006年入社
太陽光発電をくらしに身近なものとする定額機器利用サービス。それは2021年当時の東京電力エナジーパートナーにとって、前例のない試みだった。同年夏、2名の若手を中心に、サービス開発チームが形成される。リリースまで、与えられた期間は約半年。高いハードルを前にして、どのようにプロジェクトは動き出したのか。
世界中で、二酸化炭素の排出を減らそうという潮流が生まれています。東京電力グループでも、カーボンニュートラルを軸としたビジネスモデルの変革に取り組んでいますが、その取り組みの一環として「エネカリプラス」は企画されました。エコなくらし方を世に広めるという点でも、また、当社において電力小売以外の収益を確保するという点でも、大きな期待のかかったサービスだと思います。そんなプロジェクトに、社歴の浅い水野さんと山本さんがリーダーとして抜擢されました。ずいぶんと戸惑ったのではないですか?
そうですね、新サービスを構築する経験がなかったものですから、まず何をすれば良いのか、それすら分からない状態でした。ですが、開発期限が迫っていたので、不安を感じている暇もありませんでした。とにかく行動あるのみ。知見のある先輩方を質問攻めにして情報収集を進めながら、必要なタスクや開発プロセスを整理していったのが最初の一ヶ月でした。
私も同じく目の前のタスクをこなすのに必死で、不安やプレッシャーを感じている余裕さえなかったと思います。特にプロジェクトが始まったばかりのときは、全社横断の連携体制を構築することに苦心しました。サービスのプロモーションを担う「販売方」、契約者さまの各種手続きを支援する「業務方」、そしてシステム構築・保守を担当する「システム方」。3部門がしっかりと団結し同じ方向を向いて進めていかないと、プロジェクトは成功しません。ですが、関係各所のモチベーションや目線をなかなかそろえることができず……。
体制づくりは難航しましたね。ですが、そうした難しい社内調整は、経験豊富な中本さんにサポートしてもらいました。
ボトルネックだったのが業務方との連携だったと記憶しています。とりわけ私たち営業方に知見のない料金請求まわりのオペレーションは、業務方のマネージャー層との密なコミュニケーションが不可欠です。そうした部分での働きかけは、社歴の浅いお二人には少し負担が大きいものですから、私がサポートを務めました。プロジェクトが始まって3ヶ月、少し先行きが心配な状況だったかもしれませんね。ですが、業務方に手代木さんが加わってからは、いろんなことが円滑に流れ出しました。
そういっていただけると、ありがたいです。私自身、本社出向から戻り3ヶ月遅れのプロジェクト参画ということで、サービス内容の理解が追いついていませんでした。同様に、業務方のチームメンバーたちもこのサービスについて、しっかり理解しているとは言えない状況だったと思います。まずは皆の認識をそろえ、同じ方向を向くことに全力を注ぎましたが、どうやら功を奏したようです。業務方だけでなく、部を横断して連携を密にし、気の置けない関係性をつくり上げられたことを誇らしく思います。
リリースまで残すところ3ヶ月、「営業方」「業務方」「システム方」の連携体制が強固になり、プロジェクトは加速し始めた。だが、クリアしなければならない課題や検討すべき事項はまだまだ多い。最終局面に向けて、どのように駆け抜けていったか。
サブスクリプションモデルというのは、これまで私たちが構築したことのない仕組みです。お客さまからお支払いいただいたサービス料金をもとに、私たちは太陽光発電設備のリース会社にリース料を支払うわけですが、請求や督促の業務設計にはずいぶん頭を悩ませました。たとえば、お客さまの支払いが滞ったら、どのようにキャッシュフローを確保するのか。実際の運用をつぶさに想定し、対応を検討していく必要がありました。
リリースまで3ヶ月に迫っていましたが、正直なところ、まだゴールは見えていないような心境でしたね。太陽光発電設備の設置に伴う「詳細設計」の仕様を検討したり、業務方やシステム方と連携して実務のフローを構築したり、さまざまなタスクが同時並行で進捗していましたので、スケジュール管理に苦心しました。上長への進捗報告や承認決済の取得など、押さえるべきところはしっかり押さえ、どうにか乗り切ることができました。
営業から契約、料金請求まで一連の流れに対して、システムのこともロジスティックスのことも検討する必要がありましたからね。多くのステークホルダーを抱えつつ、山本さんも水野さんも、プロジェクトのリーダーとしてしっかり中心に立ってくれたと思います。
サービスリリース日が近づいてきたこの時期、私は工事業務の委託先と契約準備を進めていて、想定以上に時間がかかったことを覚えています。太陽光発電の設置工事では効率も大切ですが、何より「安全性」が最重要。過去には工数削減を優先するあまりに事故が起きた例もあり、安全性へのこだわりは妥協できません。工事業者の方々にご理解いただくために、じっくり協議を重ね、法に則った安全基準や作業手順を作成しました。
プロジェクトのリーダーとして、水野さんが大いに奮闘してくれたことは私にとっても印象深い思い出です。限られた時間の中、本当によくやってくれました。
2022年1月、「カーボンニュートラル社会の実現に向けた新しい暮らしのご提案について」と題して、「エネカリプラス」のリリース記事が世に放たれた。同年2月には申込受付を開始し、サービスの運用が始まる。プロジェクトに送り出した4名が、この濃厚な半年から得られたものとは。
「エネカリプラス」をリリースし営業活動を開始した2月以降も、引き続き料金請求システムの構築作業は継続していました。ですが定例会議の回数も減っていき、プロジェクトとしてはひとまず安定軌道に乗ったと見て良いでしょう。各所からの反響はいかがでしたか?
まずは多くのお客さまにご契約いただいたことをうれしく思います。また「エネカリプラス」リリース以降、各自治体で住宅用太陽光発電の助成事業が増加したり、東京都が太陽光パネルの設置義務化を決定したり、社会的な太陽光発電への関心も高まりを見せています。私たちもその潮流を加速させる一因になれたのではと思っています。現在は「エネカリプラス」を含めた「電化」という大きな観点からプロモーション活動に携わっており、これからいっそう大きな社会的インパクトを生み出せればと考えています。
社内に目を向ければ、部門を横断したメンバーが集まり、短期集中で大きな力を出せたことが、私たちの今後において重要な意味を持つのではと感じています。それぞれの立場で真剣に協議を重ねた時間を通して、一段深い関係が築けたのではないでしょうか。当時のプロジェクトメンバーには、今でも機会があれば相談に乗ってもらっています。
私も深く同意します。本社出向から、この東京電力エナジーパートナーに戻ってきて、いきなりプロジェクトに参加させてもらえたことは、今思えば非常に幸運でした。おかげですぐに環境になじむことができ、気兼ねなく相談したり相談されたり、かけがえのない人脈も築けたと思います。加えて、私はどちらかといえば人見知りの性格なのですが、多くの人々と関わりながらプロジェクトを仕切っていくことに、抵抗なく取り組めるようになったと感じています。
一人ひとりの実力、ひいてはチームの実力が格段に向上したのは間違いありませんね。山本さんはリーダーとしての折衝力や実行力が飛躍的に向上したと感じますし、水野さんはさまざまなステークホルダーと向き合い、業務を推進していくことができるようになりました。手代木さんも業務方を取りまとめ、サービスリリースまでこぎつけた突破力はさすがの一言に尽きます。これからも、培った実力を発揮して、電気とくらしの関係をより良いものにしていきましょう。