RECRUITMENT INFO.

プロジェクトストーリー

グリーン水素の可能性を追求し
カーボンニュートラルの
実現に貢献する

山梨県甲府市下向山町、米倉山 ── 山梨県が保有するその山の斜面にソーラーパネル約8万枚から成る東京電力リニューアブルパワーのメガソーラー発電所が広がっている。同発電所は、年間約1,200万kWhもの電力を生み出す太陽光発電所のほかに「電力貯蔵施設研究サイト」を備える。その名の通り、電力貯蔵に関する研究を行うための山梨県企業局の施設だが、いったいそこで何をつくり出そうとしているのか。その一つが太陽光発電の電力(再生可能エネルギー)をもとに、水素ガスの製造から利活用を行うPower to Gas(P2G)システムの実証施設である。電気(Power)からガス(Gas)を製造するためにP2Gと呼ばれている。県企業局を始めとしたアライアンスパートナーとともにこの米倉山で進化を続けるP2Gシステムをモデルとして、国内外で新たな事業の展開を見据えて実証試験に取り組む4名の社員が座談会を行った。

MEMBER

舟橋 聖人

東京電力ホールディングス
経営技術戦略研究所
技術開発部 環境・エネルギーエリア
2023年入社(キャリア採用)

平野 夏生

東京電力エナジーパートナー
法人営業部
スマートコミュニティ開発グループ
2015年入社

吉田 彬

東京電力ホールディングス
経営技術戦略研究所
事業開発推進室 水素事業準備室
2023年入社(キャリア採用)

鯉江 康弘

東京電力ホールディングス
渉外・広報ユニット海外事業室
事業開発第三グループ
2010年入社

chapter01
脱炭素化の
潮流を加速させるために

製造過程でCO₂を排出しない再生可能エネルギー由来の水素は「グリーン水素」と呼ばれ、石油や石炭に替わる燃料として期待されている。グリーン水素の効率的な製造と貯蔵は 、2050年カーボンニュートラル宣言の達成を左右するといっても過言ではない。製造・貯蔵技術が進む一方、今、世界的に課題となっているのはこのグリーン水素の利活用だ。どのようにグリーン水素を使うのか、その需要モデルを構築することが私たちの実証の目的なのである。こうした背景のもと、2021年に試運転を開始した米倉山のP2Gシステム。その後、どのような発展を見せているのか。

舟橋
舟橋 

では、まず私から近況を報告させてもらいます。2022年にサントリーホールディングス様 が「やまなしモデル」のグリーン水素P2Gシステムを、サントリー天然水 白州工場と白州蒸溜所に導入すると発表しました。2024年には工事を開始予定ですので、現在はそれに向けて水素製造装置のシステム設計や制御設計を進めているところです。順調に運べば、2025年にはCO₂ フリーのミネラルウォーターとウイスキーが誕生することになります。

吉田
吉田 

太陽光発電所の電気をその地域で使えば、エネルギーの運搬によって起こるロスを減らせます。送電網を敷き直す必要もありませんしね。そういった点を踏まえれば、サントリー様 とのプロジェクトは、再生可能エネルギーの「地産地消」を実践する重要なモデルケースとなりそうですね。

舟橋
舟橋 

まさにその通りで、「地産地消」こそがプロジェクトの肝だと考えています。

平野
平野 

ですが、サントリー様のような大規模プロジェクトは、地理的な条件やコスト面においてハードルが高く、現状では容易に倣うことが難しいように見受けられます。そこで私たち東京電力エナジーパートナーでは、小規模パッケージ化した水素製造装置の開発に取り組んでいます。あらかじめシステムをパッケージ化して導入のハードルを下げ、利用者の母数を増やすことが私たちのミッションです。

舟橋
舟橋 

そうですね。海外事業の状況はいかがですか?

鯉江
鯉江 

米倉山が「太陽光発電×水素」だとすれば、インドネシアは「地熱発電×水素」ということになります。日本と同じく「環太平洋火山帯」に位置するインドネシアは、世界第二位の地熱資源を抱えていて、世界第三位の地熱資源量を有する日本と、非常に親和性が高いといえます。たとえば、インドネシアのスラウェシ島では、地熱資源が豊富な一方で電力需要が少なく余剰電力の使い道を探しています。そこで、現地最大のエネルギー会社、プルタミナ・パワー・インドネシア社とともに、地熱発電を活用したグリーン水素および グリーンアンモニアの共同研究を行っています。

吉田
吉田 

インドでは、再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」に対する期待が高まっていると実感します。というのも、この国では発電量の70%が石炭火力発電由来で、大気汚染が深刻なんです。それに、土地の権利関係が複雑であることから、電力網・ガス配管などインフラ敷設も遅滞ぎみです。大規模な集中型エネルギーインフラが整う前に、地産地消型のエネルギーシステムがインド各地で展開される可能性は高いと見ています。

平野
平野 

なるほど、先行して米倉山で開発を進めてきた、私たちの水素技術が活きる余地は大きいようですね。国内・国外を問わず、このP2Gシステムがカーボンニュートラルを加速させる上で非常に重要な役割を担っていることが、さまざまな業種・業界にも理解されつつあるようで頼もしく感じます。

chapter02
志は、高く
日々の実験は泥臭く

山梨県内はもとより、国境を超えて展開されてゆく 「やまなしモデル」のP2Gシステム。地産地消型の優位性を発揮するためには、現地への適応が欠かせない。多種多様なステークホルダーに目を配り、粘り強くプロジェクトを進行していくその実態は、どのようなものか。

鯉江
鯉江 

とはいえ、やはり一筋縄ではいきませんね。水素製造販売という新規事業では、日本はもちろんインドネシアでも法規制がまだ明確に定まっていません。その中でどのように研究計画を立てていくか、日々頭を悩ませています。

吉田
吉田 

私たちのプロジェクトは、技術的な要素だけでなく、法務、財務、国際物流など多方面の 調整が必要ですよね。インドならインドで、当地の文化や商習慣も把握しなければなりません。私も利害関係者がとても多くて、調整業務に四苦八苦しています。

鯉江
鯉江 

よく分かります。現地パートナーに水素技術について丁寧に説明を行い、政府とも協調しながら地道に対話を重ねるほかありませんね。

平野
平野 

国際情勢の影響も無視できません。ウクライナ情勢の急変により、想定しなかった資材コスト高騰と納期遅延が発生した際には、本当にめまいがするような思いでした。予定していた実証目標が達成できないのではと、本気で危惧しましたね。

吉田
吉田 

どのように解決されたのですか?

平野
平野 

鯉江さんと同様、対話あるのみです。あらためて自社の事業目的を確認し、ステークホルダーとの利害関係を意識しながら対話を重ねて、目的や実施工程を見直しました。新しいことに取り組んでいると、答えの分からない課題や予想外のトラブルに遭遇するとつくづく実感しますね。スムーズに進むことのほうがむしろ少なく、誤りや回り道を繰り返しながら、 粘り強く試行することで目標ににじり寄っていくようなイメージです。

舟橋
舟橋 

幸いにして私たちのグループには非常に多彩なプロフェッショナルがそろっています。課題にぶつかったときは、とにかく周囲に相談して相談して……するとどこかに解決方法が転がっていたり、仲間が見つかったりするんですよね。私が取り組んでいるサントリー様 のプロジェクトは、インパクトの大きい案件ということもあって、けっこう皆さんが手を差し伸べてくださいます。

chapter03
成功まで、まだ道半ば
鍵を握るはビジョンの共有

国内においても、また海外においても、水素を熱源とした脱炭素プロジェクトは途上である。その成否はカーボンニュートラル宣言が示す2050年まで楽観視できない。日々、現場を動かす4人はこれからの展開をどのように見るか。

平野
平野 

小規模パッケージ化したP2Gシステムを導入する私のプロジェクトは、2024年からの実証に向けて、達成すべきことや乗り越えなければならない困難が山積みです。ですが、カーボンニュートラル宣言以降、GX(グリーントランスフォーメーション)という言葉も聞かれるようになり、カーボンニュートラル推進の機運が醸成されてきたと感じます。私たちの事業に追い風が吹いていることは間違いありません。

舟橋
舟橋 

ただ、こうしたムーブメントを一過性のもので終わらせてはいけないと強く思います。私も2025年度中に試運転・運用開始に向けて邁進していますが、水素社会やP2Gシステムを広く普及させることができてはじめて、プロジェクトが成功したといえるのでしょうね。

平野
平野 

まさに同感です。そのためにも、私たちエナジーパートナーは装置の高性能化と低コスト化に全力を注ぎます。簡単に導入してもらえるようなモデルを構築し、もっと敷居を低くしたいですね。

吉田
吉田 

現状ではコスト面において、再生可能エネルギーはどうしても、化石燃料などの直接燃料に及びません。いわば、将来への投資のようなもので、プロジェクトの真価は少し先の未来において輝くものだと思っています。多様な関係者に、そのことを理解してもらい、共感してもらうためには、オープンマインドであることが重要だと感じます。カーボンニュートラルという共通の価値を実現するため、小利にとらわれず、惜しみなく情報を共有していく。そうすることで、ともに未来を目指す仲間が増えていくのでは。

鯉江
鯉江 

私も吉田さんの考えに共感します。水素事業が成功するポイントは、将来のビジョンを描き、共感を得ることだと考えています。カーボンニュートラル達成という世界共通の目標にどう向き合っていくか。グリーン水素が広く使われるようになる社会をどうイメージするか。これらの課題を私たちだけで解決することは到底できません。世界中にパートナーを広げていき、共通のビジョンに向かって手を取り合って進んでいくことが大事だと思います。

吉田
吉田 

道のりは長いですが、ともに 難局を乗り越えていきましょう。気候変動を自分事 として捉え、持続可能な社会を築いていくプロフェッショナリズムと熱意。そうした私たちの強みを貫けば実現できるはずです。

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